はじめまして。上坂で修行中の長尾と申します。
何から書くか迷ったのですが、まずは指物の材料、木材について書いてみます。
木材と聞いてもピンとこない人も多いのではないでしょうか。
指物屋にとっての木材は料理屋にとっての食材に当たります。
料理は食材選びに始まり、その食材にあった保存法、調理法があります。また牛肉といっても牛の体の部位によってロース、バラ、ホルモンなど様々です。
木材も同様に、良い材を選び、適切に保管し、その木にあった使い方をすることが大切です。
また例えば同じケヤキの木といっても、育った環境、親の木などによって全く違った性質になりますし、一本の木でも根元と上では、また違うものになります。
仕入れもよく似ています。
魚の場合、漁師がいて、市場で競りがあり、競り落とした魚屋から料理人が買う。
木も、木こり→市場→材木屋→木工・建築業の順が一般的です。
うちでは材木屋から買うこととならんで、市場での競りにも参加しています。
市場には日本中、また海外からも木が集まります。材木屋に置いていなかったり、あっても高くて手が出ないような木が、うまくいけば手頃に競り落とすことができます。
市場は岐阜県にあります。朝7時スタートに間に合うように、それまでに目星をつけておくために
前日に泊りがけで行きます。寸法、木目、色、年輪の幅、反り具合、割れ、虫食いが無いか、、、よく見極めて競りに臨みます。
それでも、参加者は目利きぞろいです。良い木を手頃に競り落とすのはなかなか大変です。
親方は若い頃に市場に出品もしていたそうです。樹が山に立った状態で買い、切り倒してから、市場に持っていく。当時は福井から岐阜にもっていくと、いいお金になったそうです。
ただ、立った状態の樹から木の内部を推測し、木材としての価値を判断しなければなりません。親方もその道の師匠のもとで勉強したそうです。その経験が競る側、使う側としての木を見る目に活かされているようです。
おそらく、若い頃の名残りなのでしょう、親方はこの辺の巨樹のありかをよく知っています。あそこの欅、あの山の杉、あのお寺のイチョウ、、、出先の帰りなど、寄り道して巨樹を見に行きます。どれも樹齢何百年の大木です。
その樹が材料としてはどうか(大きければ良いというわけではない…など)、ということを教えてくれるのですが、それ以上に親方は巨樹に近づくことで何かエネルギーを受け取っているようです。
「樹から何かが出ているやろ」と言います。
「ゴミになるようなものを作るな」
親方から最初に言われた言葉です。おそらく、木をただの木材としてではなく、樹の命をいただいているという感覚が根っこにあるのだと思います。
僕の友人が奈良の吉野で林業に従事しています。一度、樹が倒されるところを見においでよ、と言われています。見に行かねばなと思っています。
木については、いろいろとあるので、またそのうち書こうと思います。今日はこのへんで。
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